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雲南省昆明講演会&歯科医院・歯科技工所視察

雲南省昆明講演会&歯科医院・歯科技工所視察

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2019年11月22日

日本歯科新聞11月19日号に弊社代表のレポートが掲載されました。
下記に全文転載致します。

小嶋会 小島壽先生 雲南省昆明講演会&歯科医院・歯科技工所視察

株式会社足利セラミックラボラトリー社長 宗村裕之

中国雲南省昆明で開催の「Dentist Technician Forum」に参加するため10月16、17の両日、中国に渡り、歯科医院や歯科技工所を視察した。フォーラムでは、東京都開業医の小嶋壽氏が講演し、日本からは歯科医師の天野晃氏、金丸順策氏、大原尚明氏、そして、歯科技工士の陸誠氏(コアデンタルラボ横浜社長)と私が同行した。小嶋氏の講演は上海梓彦医器械有限公司の郭記社長からの依頼によるものだ。
雲南省は中国の南に位置し、ベトナムやラオス、ミャンマーに隣接している。沖縄よりも南の緯度に位置するが、気候は穏やかで夏は涼しく、冬は温かいため「春城(常春の街)」のニックネームを持つ。東京からの直行便はないため、上海で乗り換え、上海からさらに3時間ほどかかった。
15日の早朝便で成田を後にし、上海浦東空港で中国側スタッフの郭氏、通訳の梅佳欣氏と合流、彼らの案内で昆明に向かった。移動は一日がかりで、その日の夕刻に昆明のホテルにチェックインし、筆者とは20年来の友達の鮑俊傑氏と合流した。

翌16日は小嶋氏の講演に備え、朝の8時過ぎに会場入りした。小嶋氏への期待感からか、100名規模の会場には平日にも関わらず多くの聴講生が集まり、急遽椅子を追加する盛況ぶりだった。参加者の8割は歯科医師とのことで、中国の咬合に対する関心の高さを感じた。
午前中は「臨床的中心位の重要さ」について症例を交えてプレゼンし、午後はあらかじめ準備していた模型を使って、フェイスボウトランスファーで上顎を咬合器にマウントして中心位における咬合採得のデモを行った。
講演終了後に「早期接触に興味のある聴講生は研修室に来てください」とアナウンスをすると、研修室に入れないほど人が集まり、有志全員で対応したが、予定よりも一時間程オーバーして一日目を終了した。
翌17日も朝8時過ぎには会場入りし、午前中に臨床的中心位より下顎の模型のマウントまで行い、午後は小嶋氏が自らの症例を見ながらプレゼンした。
一人の聴講生が休憩時間に小嶋氏のところに来て、中心位の誘導をしてほしいと頼んできたので、その場でデモすると、我も我もと次から次へと聴講生が集まり、収集がつかなくなった。
中国人は利己的な面があるのは否めないが、それは非常に熱心な国民性ともいえ、何が何でもこの機会を逃すまいという熱意を感じた。小嶋氏の講演は好評を博し、無事に終了した。
その後、会場併設の歯科医院「未来口腔」と歯科技工所の「JIA HONG DENTAL」を見学した。
技工所はアナログからデジタルに移行しつつあるのが見られ、デザインルームのスペースは広く取られていてデザイン用ソフト、スキャナーともに日本で使用しているものとほとんど変わらなかった。

18日は、「国際口腔 歯科器材博覧会」と「中国口腔顕微鏡医学大会」に参加するため、昆明インターナショナルコンベンションセンターに向かった。同大会は日本の「デンタルショー」のようなものだが、広い会場にゆったりと展示しているのが日本と違っていた。
また、日本のデンタルショーではなかなか見られない光景として、展示企業に世界規模の大手メーカーが集まっていること、会場内にデモ用ユニットが数多くあること、ユニットにオプションとして顕微鏡が付くものがあった。
デンタルショー見学後、昆明の石林風景区にある歯科医院と併設の歯科技工所を訪問した。
歯科医院にはまだまだスペースに余裕があり、患者が増えても対応できる体制になっていた。現在、勤務しているドクターは3人。一日3人程度の患者を診ており、ローテーションで日曜日も診療しているので一月に300人程度の患者を診ているという。ドクターの給料は月20万円程度が基本だが、診療数で歩合が付くという。
歯科技工所は従業員が約150人と、比較的大きなものといえた。勤務時間は朝8時から18時までで、休日は週に1日となっている。初任給は日本円に換算して2万5千円程になるとのことで、中国経済は成長し続けていると聞くが、首都圏と地方都市とでは経済規模にはかなりの開きがあるといえる。
デジタル機器の導入は進んでいて、レーザーシンタリングのプリンターがフル稼働していた。また、この歯科技工所では一年に一度、国内外から先生を招聘して技術交流を行っており、その事業内容はかなり大きく、世界から500人くらいの先生が訪れるとのことで、次回の交流会にはわれわれを招待すると話してくれた。

これまで、中国の歯科事情視察では大都市の北京や上海、深圳を訪れている。今回、訪れた昆明は内陸の地方都市とあって、歯科技術に若干の開きはあると感じた。ただし、講演会での受講生の意識は非常に高く、数多くの質問が積極的にあったのは印象深く、今後の発展が期待された。
歯科診療室もきれいで、特に日本以上に滅菌に関しては注意がなされていると感じた。
歯科技工所はアナログからデジタルの移行時期にあるようで、設備投資には日本の技工所とは比べものにならないくらい高価な機器等が導入されていた。中国政府が陸の玄関口として昆明を特区と指定しているため、今後さらなる発展を遂げるのかと大きな期待を寄せている。今回の視察では中国の奥深さが感じられた。