DGZI(ドイツ口腔インプラント学会)に参加して

月刊「歯科技工」2月号に弊社代表の寄稿文が掲載されました。下記に転載致します。

「ドイツ口腔インプラント学会(DGZI)第42回学術大会」に参加して」
――日本とドイツの歯科事情の違いを顕著に感じる海外視察となる――

Reporter宗村裕之(群馬県太田市/足利セラミックラボラトリー)

2012年10月5日(金)6日(土)の両日、Elysee Hotel(ドイツ・ハンブルグ)にて標記学会が開催された。ドイツ口腔インプラント学会(DGZI)は、ドイツを本拠地として本国に4000名、全世界に12000名以上の会員を有する、ヨーロッパにおいて最大かつ最古のインプラント学会であり、日本では国際口腔インプラント学会(ISOI)と提携して、年一回の学術大会や各種講演会を開催している。

本国における42回目の学術大会となる今回は、「Qualitatsorientierte Implantologie-Wege zum Langzeiterfolg(インプラントの品質向上―長期的な成功への道)」をテーマに特別講演、メーカー主催セミナー、インターナショナルセッションなど多彩なプログラムが組まれ、歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士など500名以上(日本からは25名)が参加した。

本稿では、本学会の前日に筆者らが参加した歯科医院・歯科技工所(医科、ラボ)の見学会と本学会が併催するデンタルショーの模様と合わせて当日の様子を報告する。

■歯科医院、ラボ見学会 ドイツの歯科事情を知る
学会前日の歯科医院およびラボの見学会では、まず根管治療から矯正治療、補綴治療、インプラント治療までを幅広く扱う、全面ガラス張りの近代的な建物に入居する歯科医院「Die Zahnarzte Harbestehude」を訪問した。同委員は床面積が約100m2あり、内部は非常にゆったりとした空間になっていた。また、天井に添え付けの照明の光量を落とす一方で、足下にある照明の明るさを強くするなど、患者がリラックスできるための配慮が随所に施されていた。そのほか、院内にはラボが併設されており、矯正装置のみを自前で製作していた。
次いで、日本人で2番目に歯科技工マイスターの称号を取得した大川友成氏が経営するラボ「Okawa Zahntechnik」を見学した。ラボ内にはヨーロッパならではのデザインが各所にあしらわれており、大川氏のほかに2名のドイツ人社員が働いていた。作業用模型の数に比べて完成補綴物が少ないことを大川氏に尋ねると、「ドイツではラボが高額な技工料金を歯科医院に請求することが普通であるため、日本のように多くの補綴物を製作する必要はありません」と話していた。その後、Jalilvand氏(Zahnarztpraxis Dr,Jalilvand)が院長を務める歯科医院を訪れた。こちらの医院は歯科医師1名、スタッフ2名の人員で経営しており、根管治療、補綴治療、インプラント治療をのみを取り扱っていた。こちらも床面積が広く、解放感のある内装となっていた。
昼食後は、Werner Stermann氏(STERMANN WERNER DR.DR.ZAHNARZT)が営む歯科医院にて、ソケットリフトおよびサイナスリフト(上顎洞挙上術)の外科手術を見学した。歯科技工とは直接関係のない手技ではあったが、チェアサイドワークの大変さを肌身で感じられ、筆者にとっては非常に有意義な時間であった。手術見学後は19時よりDGZI執行部のRolf Vollmer氏、Mazen Tamimi氏、Rainer Valentine氏らを交えたオープンパーティーに出席した。

■ドイツ口腔インプラント学会 3名の日本人歯科医師が登壇する
学会の初日にはまず、DGZIとISOIの執行部会議に参加した。日本から筆者を含めて4名、ドイツから3名の歯科医師・歯科技工士が出席された本会議においては、両者の提携関係の維持が確認された。
午後からはインターナショナルセッションが行われ、日本からは本学会にて「Oral Implantology Specialist」としての認定を授受している林昌二氏(横浜市神奈川区/神奈川歯科大学附属横浜研修センター 横浜クリニック)、山下修氏(横浜市青葉区/山下歯科医院)、江崎友大氏(東京都世田谷区/江崎デンタルクリニック)の3名が登壇した。中でも林氏は「Clinical evidence and current future implant concepts in Yokohama clinic of Kanagawa Dental College」をテーマに、インプラント見学を目的としたドイツ留学での経験談や、勤務先でのインプラント治療に関する臨床データなどを発表した。
学会終了後は20時よりコングレスパーティーに参加した。

■デンタルショー 韓国メーカーの勢いを実感する
最終日は、本学会が併催するデンタルショーに参加した。特に印象に残ったのは、3M ESPE社製のミニインプラントであったが、狭く、薄い顎提を有する患者が多い日本において広く普及するかどうかについては疑問が残った。また、日本では未発売の製品が多くあり、ヨーロッパと日本との販売経路の違いを再認識したほか、韓国のオステム社がインプラントメーカーの中でシェアを伸ばしているようにも感じられた。

末筆ながら、今回の一連の海外視察に通訳として同行してくださった大川友成氏に深く感謝の意を表します。